雪が降った。
父が決めた墓は、丘ほどの山の中腹にあった。
明るい花曇りの朝。
納骨する為に初めてその場所を訪れた。
久しぶりに膝に乗せた母の骨は、ことりとも言わず。
墓苑に着いても、何の実感も沸かなかった。
本当は何処かに居て、
「ごめん、嘘だったの」と出てくるのかもしれない、
なんて思ったりもした。
花曇りはいつの間にか青空に変わっていた。
さようならをするには、とてもいい天気なのかもしれない。
まだ、そんな気持ちになれなくても。
住職が到着する頃、白いものが落ちてきた。
青空に白いものが落ちてきたので、早い桜かと一瞬思った。
けれどちらちらと降ってきた雪は直ぐに吹雪となり、窓を殴っては消えた。
西の空は鮮やかに晴れている。
入りたくないのかなと思った。
一人は嫌。
置いていっちゃ嫌。
前日、母の骨をひとかけら貰おうと思っていた。
でも、「骨が他の場所にあると成仏出来ない」と
聞かされた話が耳に残って、出来なかった。
焼き場で捨てられた、滓を貰えば良かった。
そうしたらせめて、滓でも一緒に居られたのに。
だから、こんなに雪が。
吹雪く外へ出た途端、雪が止み始めた。
読経と共に、青空が頭上に広がっていく。
雪なんて降らなかったみたいに。
私たち親子はとても似ている。
癇癪をおこして当たり散らした後、一人で反省する。
しょんぼりしながら、でも「ごめん」とは素直に言えない。
ただ、何も無かったかのように振る舞う。
だから。
もういいわよ。
ちょっと駄々捏ねたかっただけじゃない。
納骨が終わるまで奇麗な青空だった。
「お母さんは派手な人だったけん、最後まで派手じゃったね」と伯母が言った。
納骨が終わった途端、曇りだしたからだ。
さっきまで真新しい墓が、スポットライトを浴びたみたいに輝いていたのに。
晴れた日に雨が降ることを狐の嫁入りという。
じゃあ、今日みたいな日は? 何て言うのかな。
お母さん。
父が決めた墓は、丘ほどの山の中腹にあった。
明るい花曇りの朝。
納骨する為に初めてその場所を訪れた。
久しぶりに膝に乗せた母の骨は、ことりとも言わず。
墓苑に着いても、何の実感も沸かなかった。
本当は何処かに居て、
「ごめん、嘘だったの」と出てくるのかもしれない、
なんて思ったりもした。
花曇りはいつの間にか青空に変わっていた。
さようならをするには、とてもいい天気なのかもしれない。
まだ、そんな気持ちになれなくても。
住職が到着する頃、白いものが落ちてきた。
青空に白いものが落ちてきたので、早い桜かと一瞬思った。
けれどちらちらと降ってきた雪は直ぐに吹雪となり、窓を殴っては消えた。
西の空は鮮やかに晴れている。
入りたくないのかなと思った。
一人は嫌。
置いていっちゃ嫌。
前日、母の骨をひとかけら貰おうと思っていた。
でも、「骨が他の場所にあると成仏出来ない」と
聞かされた話が耳に残って、出来なかった。
焼き場で捨てられた、滓を貰えば良かった。
そうしたらせめて、滓でも一緒に居られたのに。
だから、こんなに雪が。
吹雪く外へ出た途端、雪が止み始めた。
読経と共に、青空が頭上に広がっていく。
雪なんて降らなかったみたいに。
私たち親子はとても似ている。
癇癪をおこして当たり散らした後、一人で反省する。
しょんぼりしながら、でも「ごめん」とは素直に言えない。
ただ、何も無かったかのように振る舞う。
だから。
もういいわよ。
ちょっと駄々捏ねたかっただけじゃない。
納骨が終わるまで奇麗な青空だった。
「お母さんは派手な人だったけん、最後まで派手じゃったね」と伯母が言った。
納骨が終わった途端、曇りだしたからだ。
さっきまで真新しい墓が、スポットライトを浴びたみたいに輝いていたのに。
晴れた日に雨が降ることを狐の嫁入りという。
じゃあ、今日みたいな日は? 何て言うのかな。
お母さん。
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