三回忌。

2004年3月7日
雪が降った。

父が決めた墓は、丘ほどの山の中腹にあった。
明るい花曇りの朝。
納骨する為に初めてその場所を訪れた。

久しぶりに膝に乗せた母の骨は、ことりとも言わず。

墓苑に着いても、何の実感も沸かなかった。
本当は何処かに居て、
「ごめん、嘘だったの」と出てくるのかもしれない、
なんて思ったりもした。

花曇りはいつの間にか青空に変わっていた。
さようならをするには、とてもいい天気なのかもしれない。
まだ、そんな気持ちになれなくても。

住職が到着する頃、白いものが落ちてきた。

青空に白いものが落ちてきたので、早い桜かと一瞬思った。
けれどちらちらと降ってきた雪は直ぐに吹雪となり、窓を殴っては消えた。
西の空は鮮やかに晴れている。

入りたくないのかなと思った。

一人は嫌。
置いていっちゃ嫌。

前日、母の骨をひとかけら貰おうと思っていた。
でも、「骨が他の場所にあると成仏出来ない」と
聞かされた話が耳に残って、出来なかった。

焼き場で捨てられた、滓を貰えば良かった。
そうしたらせめて、滓でも一緒に居られたのに。

だから、こんなに雪が。

吹雪く外へ出た途端、雪が止み始めた。
読経と共に、青空が頭上に広がっていく。
雪なんて降らなかったみたいに。

私たち親子はとても似ている。

癇癪をおこして当たり散らした後、一人で反省する。
しょんぼりしながら、でも「ごめん」とは素直に言えない。
ただ、何も無かったかのように振る舞う。

だから。

もういいわよ。
ちょっと駄々捏ねたかっただけじゃない。

納骨が終わるまで奇麗な青空だった。

「お母さんは派手な人だったけん、最後まで派手じゃったね」と伯母が言った。
納骨が終わった途端、曇りだしたからだ。
さっきまで真新しい墓が、スポットライトを浴びたみたいに輝いていたのに。

晴れた日に雨が降ることを狐の嫁入りという。
じゃあ、今日みたいな日は? 何て言うのかな。

お母さん。

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