軽い軟禁状態。
2004年1月1日元旦だもんな。
昨夜、暫く姿を見ない父とマツゲ(弟)から電話があった。
同じような時間帯にかけてくる辺り、やはり親子なのだろうか。
父が電話をしてくることなんて、滅多にないけれど。
父の電話は、おせちを食べるかというものだった。
いらない、明日も仕事だからと言うと
「そうか、それじゃ冷蔵庫に入れて置くから」と言う。
そのまま、逃げた29日の話になりかけたので遮った。
お願いだから、もう何も私には言わないで。
私は、お父さんが再婚したくても何も言えない。
幼稚園の頃からずっとしてきた約束を、守れないと思いたくない。
お父さんはこれから先幸せになるかもしれないけど、
お母さんにはもう、「これから」も「いつか」も無いから。
モルヒネで頭おかしくなっても、誰のことも区別出来なくても、
お父さんのことだけは呼び続けて、
お父さんの言うことだけは聞いたお母さんの、
その願いくらい叶えてあげたいの。
だけど、お父さんに幸せにならないでとも言えない。
けれど、やっぱり昔お母さんを泣かせたことも忘れられない。
だから、何も言わないで。
お父さんだって、お婆ちゃんがお爺ちゃんの
死んだ後で再婚してたら嫌だったと思う。
私は、お父さんの恋愛なんて聞きたくない。
お父さんが、お母さん以外の人と暮らすことに納得が出来ない。
だから、何も言わないで。
泣かないようにと自分に言い聞かせたけれど、
情け無いほど瞬間的に涙は零れ落ちた。
一度流れ始めると、ただの子供のように泣きじゃくるしか出来なかった。
何度も父に「泣いてたら聞こえない、鼻ぐらいかみなさい」と言われ、
うん、と泣きながら盛大に鼻をかみ、
何度も何度も同じ言葉を父に伝えようとしては、
嗚咽が零れて喉を塞ぐのに腹を立てた。
盛大に子供返りをしている自分を感じながら、
どうしても涙を止めることが出来なかった。
父は、珍しく私の言うことを聞いてくれた。
たまに言葉を挟もうとしても、
「いま私が喋ってるんだから、
たまには黙って最後までちゃんと聞いてよ!」
と、いきり立つ遊上が相手だから、大人しかっただけかもしれない。
でも、それに張り合って怒鳴り返し、
悪罵の限りを尽くすのが遊上の父である。
それがどうしてかとても悲しくて、更に泣いた。
遊上が取り敢えず落ち着いたところで、
良いお年をと言って電話を切った。
この家に帰って、お母さんにお線香をあげる気は無いのね。
って思ったけど、言えなかった。
どうしても、言えなかった。
マツゲは大晦日が誕生日の彼女と一緒で、
遊上を気遣う彼女にせっつかれて電話をしてきた。
弟:「お前、一人なのか? 一緒に年越すか?」
一瞬、息子と離れて暮らす母親の気分を味わった。
気遣う妻にせっつかれて、電話する息子。
一応まだ二十代なのにー。
いいからラブラブしとけと言って、電話を切った。
明日仕事だし、ありがとう。
電話を切った後、悲しいのにぼんやりとした幸福感がやってきた。
電話がとてもうれしかった。
内容は兎も角、電話をかけてきてくれたことが本当にうれしかった。
普段、まるで協調性のない私たちだけれど、家族なんだなと思った。
多分、もうすぐ私たちはバラバラになる。
母は墓に入り、父は再婚し、弟は結婚し、遊上は家を出る。だろう。
母が居ないだけで、私たちはこんなにも容易く離れていく。
さっき、仕事から帰ってきたら父の手紙が壁に貼られていた。
茶色い封筒と共に、無造作にガムテープで留められて。
「おせち料理が冷蔵庫に入っています。
おモチも入っている。
食べて元気に仕事頑張って下さい。
良い年であるよう祈っている。
あきへ 父より」
先日、父は最後の仕事を終えた。
来年で定年になるが、もう出社することはない。
弟とその彼女は、最後の仕事を見に行ったという。
遊上は最後の仕事がいつだったかも知らなかった。
そんな娘に宛てられた、それ。
茶色い封筒には「お年玉」と表書きがされ、
数枚の紙幣が入っていた。
来年30になる娘に宛てられた、その娘より頑固で意地っ張りな、
素直じゃない父の精一杯の愛情。
父の幸せを素直に祝うことも出来ない。
母の願いを叶えることも出来ない。
私が死にたかった。
どうしてもその言葉が頭を過ぎる。
死ぬのが私だったら良かった。そうしたら。
正月早々、お父さんに泣かされたよと母にお線香をあげながら呟いた。
何で私もあの人も、こうなんだろうね。
返事は無い。
昨夜、暫く姿を見ない父とマツゲ(弟)から電話があった。
同じような時間帯にかけてくる辺り、やはり親子なのだろうか。
父が電話をしてくることなんて、滅多にないけれど。
父の電話は、おせちを食べるかというものだった。
いらない、明日も仕事だからと言うと
「そうか、それじゃ冷蔵庫に入れて置くから」と言う。
そのまま、逃げた29日の話になりかけたので遮った。
お願いだから、もう何も私には言わないで。
私は、お父さんが再婚したくても何も言えない。
幼稚園の頃からずっとしてきた約束を、守れないと思いたくない。
お父さんはこれから先幸せになるかもしれないけど、
お母さんにはもう、「これから」も「いつか」も無いから。
モルヒネで頭おかしくなっても、誰のことも区別出来なくても、
お父さんのことだけは呼び続けて、
お父さんの言うことだけは聞いたお母さんの、
その願いくらい叶えてあげたいの。
だけど、お父さんに幸せにならないでとも言えない。
けれど、やっぱり昔お母さんを泣かせたことも忘れられない。
だから、何も言わないで。
お父さんだって、お婆ちゃんがお爺ちゃんの
死んだ後で再婚してたら嫌だったと思う。
私は、お父さんの恋愛なんて聞きたくない。
お父さんが、お母さん以外の人と暮らすことに納得が出来ない。
だから、何も言わないで。
泣かないようにと自分に言い聞かせたけれど、
情け無いほど瞬間的に涙は零れ落ちた。
一度流れ始めると、ただの子供のように泣きじゃくるしか出来なかった。
何度も父に「泣いてたら聞こえない、鼻ぐらいかみなさい」と言われ、
うん、と泣きながら盛大に鼻をかみ、
何度も何度も同じ言葉を父に伝えようとしては、
嗚咽が零れて喉を塞ぐのに腹を立てた。
盛大に子供返りをしている自分を感じながら、
どうしても涙を止めることが出来なかった。
父は、珍しく私の言うことを聞いてくれた。
たまに言葉を挟もうとしても、
「いま私が喋ってるんだから、
たまには黙って最後までちゃんと聞いてよ!」
と、いきり立つ遊上が相手だから、大人しかっただけかもしれない。
でも、それに張り合って怒鳴り返し、
悪罵の限りを尽くすのが遊上の父である。
それがどうしてかとても悲しくて、更に泣いた。
遊上が取り敢えず落ち着いたところで、
良いお年をと言って電話を切った。
この家に帰って、お母さんにお線香をあげる気は無いのね。
って思ったけど、言えなかった。
どうしても、言えなかった。
マツゲは大晦日が誕生日の彼女と一緒で、
遊上を気遣う彼女にせっつかれて電話をしてきた。
弟:「お前、一人なのか? 一緒に年越すか?」
一瞬、息子と離れて暮らす母親の気分を味わった。
気遣う妻にせっつかれて、電話する息子。
一応まだ二十代なのにー。
いいからラブラブしとけと言って、電話を切った。
明日仕事だし、ありがとう。
電話を切った後、悲しいのにぼんやりとした幸福感がやってきた。
電話がとてもうれしかった。
内容は兎も角、電話をかけてきてくれたことが本当にうれしかった。
普段、まるで協調性のない私たちだけれど、家族なんだなと思った。
多分、もうすぐ私たちはバラバラになる。
母は墓に入り、父は再婚し、弟は結婚し、遊上は家を出る。だろう。
母が居ないだけで、私たちはこんなにも容易く離れていく。
さっき、仕事から帰ってきたら父の手紙が壁に貼られていた。
茶色い封筒と共に、無造作にガムテープで留められて。
「おせち料理が冷蔵庫に入っています。
おモチも入っている。
食べて元気に仕事頑張って下さい。
良い年であるよう祈っている。
あきへ 父より」
先日、父は最後の仕事を終えた。
来年で定年になるが、もう出社することはない。
弟とその彼女は、最後の仕事を見に行ったという。
遊上は最後の仕事がいつだったかも知らなかった。
そんな娘に宛てられた、それ。
茶色い封筒には「お年玉」と表書きがされ、
数枚の紙幣が入っていた。
来年30になる娘に宛てられた、その娘より頑固で意地っ張りな、
素直じゃない父の精一杯の愛情。
父の幸せを素直に祝うことも出来ない。
母の願いを叶えることも出来ない。
私が死にたかった。
どうしてもその言葉が頭を過ぎる。
死ぬのが私だったら良かった。そうしたら。
正月早々、お父さんに泣かされたよと母にお線香をあげながら呟いた。
何で私もあの人も、こうなんだろうね。
返事は無い。
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