遊上の家には笠子地蔵が来る。

遊上一家が越してきた当時から、
何くれとなく世話をしてくれる地主さんがいる。
地主さんは色々な作物を育てているようで、
四季折々の品を遊上家に届けてくれるのだ――玄関先に。

春には筍、夏には西瓜、秋には葡萄や梨、冬にはシクラメンや大根。

朝、出勤しようとドアを開けると、
そっと置かれているそれらの作物で遊上は季節を知る。
地主さんは何時も朝早く起きるらしく、
それらは必ず朝、
あたかも供えられたように玄関先に置かれているのであった。
実に心温まる話である。

何が供えられるか毎シーズン決まっている訳ではなく、
年によって置かれるものが変わる事もある。
決して変わらないのは冬のシクラメン。
地主さんはシクラメン園を持っているのだ。
毎冬それはそれは立派なシクラメンが来る。
そして遊上家はその立派なシクラメンを毎年枯らせてしまう。

今朝は巨峰を頂戴した。

あまりにも立派な巨峰である。
大きく、粒揃いでずっしりと重い。
さっそく洗って口に入れると、
もう随分と冷え込んできた朝の空気に置かれていた巨峰は
丁度良い冷たさであった。
「朝の果物は金」という言葉が脳裏を過ぎる。
 
箱の中にはちらしが一枚入っていた。
てっきり地主さんが作った巨峰だとばかり思っていたが、
どうやら違うらしい。
何処で採れたのだろうとちらしを手に取った。
ジャンボ鶴田農園。

朝から頭の中でゴングが鳴り響いた。

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