16歳の夜を、ラジオが埋めた。
 
1:00〜3:00
毎週月曜日〜金曜日。
 
毎日寝不足だった。
それでもラジオから離れられなかった。
怒声と悲鳴と叫びを遮ることのできないラジオから。
 
知らない世界、知らない言葉、知らない音楽。
時間の帯を越えるコール音。

ジョカスタ・シェイクスピア
QPちゃん

Hello, may I speak ?

胸に詰まる閉塞感と焦燥と、
広がり続ける空白をコール音が少しだけ埋めた。
 
民主主義的音楽
突然段ボール
暴力温泉芸者

私が好きな音楽とは違うものだった。
今でも好きじゃない。
どんな歌だったか覚えていない。
ドアの隙間から漏れ聞こえてくる音と、
ラジオから聞こえてくる音はとても似ていた。

過酸化水素水が、二酸化マンガンの夢を見ました。

聞いたこともない言葉だった。
余すところ無く伝えようと、
十代を半分しか過ぎていない自分よりも
急ぎ、走り、己に急き立てられた言葉が連ねられた。

己のことを。
世界のことを。
 
なにひとつ、役立ちはしなかった。
そのどれもが染みわたること無く、大人と呼ばれる年齢に私は達した。
 
寝不足の朝を叩き起こした声も変わった。
朝を横切るコール音は途絶え、一日の終わりに流れる声も消えた。
そして私はラジオに背を向けた。

それでも時折、ラジオをつける日がある。

周波数もろくに見ずつけたラジオはどれも同じに聞こえる気がして、
だから闇雲にチューナーを回すけれど見つからない。
 
あの場所は、何処へ行ってしまったのだろうと。

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